市民参加型予算の研修会

 10/13に明治大学で開かれた市民参加型予算の研修会のメモ書きです。1. 新公共経営(NPM)から新公共ガバナンス(NPG)へ 各国の政府は戦後から今日まで明らかに統治形態が変わってきており3つの時期に分けられる。第1期は1970年代までの旧来階層型の行政管理(Old Public Administration)。第2期は1980年代から市場原理主義による行財政改革が進められた時期であり新公共経営(New Public Management NPM)。そして第3期が2000年代頃から行き過ぎた市場原理主義を民主的手続きへと戻す動きである新公共ガバナンス(New Public Governance)である。NPMが効率性を優先課題としてきたのに対し、NPGは民主制を重視して政策決定を行うものである。ここでは政府は民との交渉と利害調整役として協働のガバナンスを形成する。 2. 公共サービスにおける協働(コープロダクション) 協働とは「公共サービスにおける協働(コープロダクション)とは専門家と市民がお互いの資産、資源、貢献をよりよく活用し、よりよい成果と高い効率性を実現することである」と定義され、専門家(公的機関)とコミュニティの二者が必要と考えられる。公的機関、市民、コミュニティら全てが成果の改善に貢献するものが協働である。 公共サービスの協働とそうではないものの違いは、サービスに誰が関与しているかによって判断される。従来のサービス提供は利用者とコミュニティの関与は低いものであり、一方、公的機関の関与が低いものは自助とみなされる。公的機関のみならず利用者とコミュニティの関与が高いものを協働と捉えることができる。3. 世界の市民参加型予算 市民参加型予算は協働委任(コーコミッショニング)の一形態と考えられる。協働委任とは、協働でサービス供給者にどの位の予算でどれほどのサービスを行うかを計画し決定することである。自治体の予算の一部をどのように配分するかの決定を市民に委ねる民主的な方法と定義される。 各国で市民参加型予算が導入されている背景としては、サービスへの需要が高まる一方、悪化する財政状況において、公共サービスの削減または地方税の増税は破局的な結果になる可能性があり、どのサービスを削減するか、誰にどのサービスを提供されるべきかの優先順付けをどうするかなどについて市民を公的な意思決定プロセスに参加させることで社会的信頼を再構築しようというものである。 1989年にブラジルのポートアレグレで実施されたものが市民参加型予算の始まりと言われており、近年ではヨーロッパ各国など2010年までに1500近くの地域で実施されている。 市民参加型予算のタイプは、地域によって様々である。誰が市民参加型予算に参加するのか、誰が予算を決めるのか、誰が市民参加型予算のプロセスを管理するのか、どれくらい市民参加型予算は制度化されているのか、どのくらいの予算が市民参加型予算にかけられるのかなどはそれぞれ異なる。例えば、フランスのポワトゥーシャラント地区では、2004年以来、100以上の学校、3万人以上の生徒・保護者・教師が学校へのとうしに関する議論に参加し、地区の全支出の25%にあたる予算が学校にあてられている。 市民参加型予算のプロセスの例は以下のものである。まず、近隣地区の協議会により地域のニーズの特定と代表の選出が行われ、その後、代表会議によりプロポーザル(企画・提案)が作成される。プロポーザルが公表され、地域の反応を得てテーマ毎の部会による実行可能性の検討や事業への反映が行われる。これらが市民に発表され投票にかけられ、予算が承認されるという流れとなる。この間、行政職員は干渉しすぎることなく参加していかなければならないが、代表として選ばれた人々が単なる好奇心、個人的な関心、ある特定の利益の代弁ではなく、市民として貢献したいという志を持っている人であるかどうかを確認するというバランスをとる必要がある。 市民参加型予算の効果は、市民に税金をどのように使うかについての権限を与えることで、間接民主主義において代表する者と代表されている市民との間のギャップを小さくし社会的信頼を再構築し、行政の透明性を高めることである。市民参加型予算が行われているイタリアの自治体では、市民の納税が増え、公共の空間がよりよく維持されるようになったとの調査結果がある。 市民参加型予算の課題としては、行政職員は市民をどのように市民参加型予算に参加させればよいか分かっているのか、地域コミュニティは予算の使い道を知らされているのか、行政は市民と協働するパートナーシップ文化へ変わる準備ができているかなどがあげられる。 市民参加型予算の前提としては2つの条件があり、市民が自治体が何をやっているのか理解する力を強化すること、市民が意見を表明する力を強化することがあげられる。

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